我家で見る彼は、大柄だが、おっとりしてて、
下の子猫たちの面倒も見る、まれな人(猫?)の良い子だった。
体が大きい分、よく食べ、顔はふっくらを通り越し、
「デブ」が通称となった。

当時は、ほとんどウチの敷地内で過ごしていた。
そんな彼が、いつからか、どこかへ繁盛に出かけるようになった。
橋を渡り、国道脇の歩道を歩いて隣地区へ向かうのを何度か見かけた。
それは付近の住民も同じで、
デブは、「その辺の子供より、よほど注意深い、道路を歩く猫」
と、知られるようになった。
普通、猫は、飛び出しで轢かれるものだが、
このデブに関しては、とかく、狭い町道を横断するさいも、
左右を良く見て渡る。
橋を渡るときも、けして飛び出すことなく端を歩き、
国道に出ると、脇の歩道を歩いていくのだ。
行き先は判らなかったが、
当時は、何日もあけることなく、ウチの敷地内に戻ってきていた。
「隣町に彼女でも居るんだろう」…などと家族で話していた。
その彼が、在る時期から「どこか」に居る時間のほうが増えていき、
ウチには餌を食べにくるだけの格好になった。
朝やってきてゴハンを食べると、橋を渡り、隣地区へ行き、
夕方、またゴハンを食べにきて、また橋を渡って歩いていく。
隣地区まで約1kの距離、それを日に二往復するのだ。
多分、どこでも餌を貰えないのだろう、と推測していたが…
目撃者も増え、
「橋を渡って歩く猫が居る」と評判(?)になっていた。
普通、猫は、イヌのように散歩したりはしない。
その頃、隣地区で、
「ヤクザな猫が、○○(ウチの地区名)から橋を渡ってきて、
地元の猫を苛める」と噂になっていた。
それがデブだという。
デブの体に生傷が耐えないのは、
ケンカに弱いからと思っていたが…
「ウチの子に限って」
よく聞く親バカな意見だが、まさに我家も同じく…
別猫の話なんじゃないか? …と。
隣地区住民の話によると、紛れもなくデブらしい。
あるときは、片前足が地面につけないほどの怪我を負いながらも、
毎日餌を食べに来ていた。
デブは、周辺の猫たちの中、唯一、我家の玄関を開ける猫だ。
人間でも苦労するたてつけの悪い引き戸を、
飛びついて、全身を揺らし、勢いで開けてしまう。
そうして、台所で人が来るのを待っているのだ。
何せ、巨体の持ち主である。
推定6k超。 小ぶりの中型犬ほどもある。
巨体にものを言わせ、付近の猫をねじ伏せているらしい。
今夏頃だったか、
そのデブが姿を見せなくなったのは。
一月くらいが過ぎ、近所の人も「最近、あの猫が来ない」
と言いはじめ、推定死亡と言う事に。
その後、目撃者談により、隣地区で元気にしているらしいことが判った。
暫く間を置き、彼は、たまに餌を食べに通ってくる。
隣町の噂元が全く知らない人ではなかったため、
猫缶を持って、お詫びとお願いに行った。
隣地区でも「どうしようもないヤクザだが、頭のいい猫」と評判らしい。
彼はさらに縄張りを広げる積もりなのか、
その後、その隣隣地区へと、橋を渡って歩く彼が目撃されているそうだ。
「猫違いじゃないか?」と何度も確認したが、
1 その周辺に、こんな色の猫は一頭も居ない。
2 目撃者は猫好きなので、猫の顔を間違えることはない。
…そうだ。
繁盛に出かけるようになってから、
見るからに痩せてきていたが、最近は普通体形くらいになった。
食後、一休みしているデブ

この面構え!
しかし、これを「丸く可愛い顔をしている」と思う人も居て、
人の好みって判んないな~とつくづく。

スポンサーサイト