Azure Sky

日常の出来事、想いを記します

わんこ埋葬

 昨夜は居間のコタツわきで寝た。
アナの亡骸と頭を付き合わせるように。
もう本当に最後だから。

「ペット飼いはキモイ」と言われるのも当然か。
傍からしたらそれが普通なんだろう。
でも、あえて、くどくど、ダラダラ書き殴ってやる。


 蛍光灯の小玉だけの灯り下では、
アナは、ただ寝ているようにしか見えない。
 ふと呼吸の音が聞こえた気がして、
掛けたキルトをめくってみる。
鼻に手を近づけてみる…
 
 あの状況で仮死なんてなるわけがないのに。
あれから何度も繰り返し確認したんだから。

 前日の貫徹で、頭がぼうっとして、ヅーンと痛い。
それが、この現実を夢のようにぼかしている。
一種の逃避かな。

 眠らないと。
明日は埋葬しなくちゃならないんだから。
安定剤と睡眠導入剤を飲み、
意識が落ちるまで、アナを見たり触ったり…
 

 私がコタツで転がっていると、
アナがもそもそとやってきて、
私の背中に身を寄せ、一緒に寝るのが常だった。
 こデブなアナは暑がりで、
コタツに入ることは好まなかった。

 通夜というより、
いつものように一緒に寝たい。
じっと見ているとアナが気にするから。
(亡骸が痛むから)身を寄せられないのが難だが。


 先代や、
その先代の、最後の日の記憶が、
重なりあい、ぐちぐちゃに混ざり合う。
 次代の子が来て、その子を本心から可愛いと思っても、
前の子を忘れたわけじゃないのだ。

「上書き保存」ではなく、
「名前をつけて保存」
 
 
(私がいるから)親が気にしているようで、
気配で何度も目が覚める。
家が昔の造りだから、部屋を突っ切らないと移動できないのだ。
 薬の量の割りに眠りが浅い。
 
 まだ朝は遠い。
もう一度薬を飲んで強引に寝た。
意識が無ければ夢も見ずに済む。
 朝になり、親の気配も感じてはいたけれど、
午前十時頃まで寝ていた。
(というより、意識がなかった)


 外は陽が射し、
父が庭先を掘り始めている。

 何かしなくちゃ居られない。
シーツとか、アナの使っていた毛布とか、
ラグとか、大物を次々洗濯機に放り込む。
 
 居間では、父がアナの亡骸を構っている。
もう埋めるのか…
雑用を済ませたら、
もう少しアナの脇にくっついている積もりだった。
 埋めるのは私だけでもできるから、夕方でもいいじゃないか。

 まあね…判ってはいるんだ。
こうやって延ばすと、
また、次々と延ばしてしまうだろう、と。

 そうしてぐずぐずしているうちに、
他人の手で終えられてしまうのもイヤなので、
自分でした。
 早く土に還るよう、白い綿ツイル一枚で包んで。


 胸元には、
アナの好物だった、ササミ、砂肝ジャーキーと、
菓子パンを少し入れた。
 
 

 仕事難民になってからというもの、
オヤツの余裕が減り、ササミのみになった。
(もちろん、病院では煩く禁止されていたが)
ちゃんと食べられるうちに、
砂肝ジャーキーも食べさせておけば良かった。

 いつの間にかアナが決めたルールにより、
風呂、散歩はもちろん、三時のお茶時間、
とどめは、トイレに連れて行ったあとも、
ササミジャーキー(の欠片)を与えることになっていた。

 アナは、敷地内であっても、
一人ではトイレも行かない変な子だった。
クソ寒い中、アナの用足しに付いていかなきゃならない私が、
なぜオヤツを上げなきゃならないのかギモンだが。
 普通、逆じゃないか。…とか、まあ、思い出は星の数ほど。


 こうして自分で包んでも、
アナの姿が見えなくなると、やっばり、何度もめくってみてしまう。
生きていなくとも、
愛情の対象となる形が、あるのと無しの差は大きいようだ。

 父に埋められてしまわないうちに、
アナを抱き、穴の中に入れた。
この重みを、この腕で感じられるのもいよいよ最後か…
 仮に、米袋を抱いてみても、それは全く別のものだ。

 重篤になってからは、触るのも憚られた。
体位を変えようとするのを補助するくらいが限度。
 子犬のときを除き、少なくみても11年、
この重さを抱えて、毎日、階段を昇降してきたのか。
 我ながら、よくやるわ。
先代の末期で懲りたにもかかわらず…


 感情が抑えられない。
近所の人には、
獣の声のような音に聞こえたかもしれない。
涙や鼻水がダラダラ流れ、喉が詰まって言葉にならない。

アナ、寒いね、
こんなに痩せて、
こんなに小さくなって、
何日も好物すら食べられず、
水も飲めずに…
 
アナを置いた穴の中に座り込んで泣いた。
一緒に埋められてしまいたい。


包んだシーツが見えなくなるまで土を掛けた。
同時に、今すぐ掘り返したい衝動が湧き上がる。
 あとは、すぐに父が埋めてしまった。
傍からすれば、私が壊れていく様を見るのが怖いのだろう。
 
 初代シェルティが逝った後、掛かっていた医師が言った。
「自分の子が死んだ以上に悲しむ飼い主が居るから、
確信していても、死ぬなんてとても言えない」と。
あのとき、
「連れて帰っていいですよ」の言葉を都合よくとった私の愚かさが恨めしい。



 アナの体積の分だけ余った土が、
そこを盛り上げている。
 粗末な石の墓標と、
古いプラ製の花立てに枯れかけの菊の花、
アナの使っていた茶碗に入れた水…
 
 いずれも父の仕事だが、私は文句は無い。
むしろ(私自身も)何も無くて構わない。
亡骸はモノでしかなく、そこにはアナは居ないから。
(どっかの人の歌は嫌いだが)
 
 
 埋葬後、また、雪が降り始めた。
日が射しているときに埋めて良かったのだ。
…と思い込もうと努力中。


 冬は嫌い。
暗くて寒いから。
 雪も嫌い。行動制限が増えるから。
この数日で、冬も雪も、さらに嫌いになったことは間違いない。

 何かしないでは居られない。
雪の舞い始めたなか、洗車を始めた。 
寒いんだけど、それも感じない。

 運転席のドアには血が点々と付き、
トランクには、血が染み付いて、バリバリに凍ったタオルが入っていた。
(なんの事件だよ…)

 病院へ行ったのは一昨日なのに、遠い昔のようでもある。
忘れたいけれど、
車に乗った途端、思い出して泣けてくる。
臨終の先代を乗せて、泣きながら帰宅したことを芋づる式に思い出す。
 …雪が強くなった。

 
 日々の習慣に、突然、ポカンと隙間が出来た。
だからといって、暇というほど暇じゃなし、
第一、そんなハンパな時間なんて、
ぼーっとしているだけでも、すぐ埋まってしまう。
 なんだかんだ言いながら、私の生活はワンコと一緒だったのだ。


 夜、自室のいつもの場所に、
いつものように、アナの寝場所を作った。
どうせ、まだそこいらに居るんだろう。
 布団がないと、恨めしそうに、上目遣いで私を見ていた。
無駄鳴きはやめないのに、
そういうときは、一言も発せず、ただ視線を送る。
 
 アナ、オマエは、
ある意味、とても疲れるワンコだったよ。
遺髪を詰めた瓶を寝場所に置き、いつもの毛布を掛ける。
 お休み、アナ。
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